旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 よく考えたら、個人情報を盗み見て自宅に押し掛けるなんてやばい……?

 一瞬そんな思いが頭をかすめたが、今はなりふり構っていられない。彼を説得できるかどうか、リーダーとしての資質が問われているのだ。

 そんな使命感に駆られ、私は千葉くんの住所を控えると会社を飛び出した。


 会社の最寄り駅から約十五分で、彼の住まいがある新木場に到着した。

 スマホのマップで道順を確認しつつ、駅前のロータリーを早足で通り過ぎ、十分弱で目的のアパートの前に着く。クリーム色の外壁の、小ぢんまりとした三階建てのビルだ。

「三〇三号室……ここだ」

 階段を上がり、ちょうど通路の中央にある部屋の前で立ち止まった。ドアの横には自転車が置いてあり、そういえば千葉くんは自転車通勤だっけと思い出す。

 ……勢いで来ちゃったけど、大丈夫かな。いや、びびるな理子。千葉くんだって話せばわかってくれるはず。

 自分を奮い立たせ、ドアの横のインターホンを押す。ピンポーン、と軽やかな音がした後、ガチャリとドアが開いて千葉くんが顔を覗かせた。

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