旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「じゃさっさと支度しろ。俺の乗ってきたタクシーが下で待ってる」
「やった、タクシーで会社帰れるんだ。じゃあ千葉くん、私たち、先に乗ってるね?」
私はエビと連れ立って、千葉くんの部屋を後にした。アパートの通路でふたりきりになると、さっそくエビに聞きたかったことをぶつける。
「ねえ、なんでここにいるの?」
「なんでって……お前のチームの奴らがわざわざ俺のところまで言いに来たんだ。『蟹が兎に喰われるかもしれません!』って。よくよく聞いたら千葉の家に理子がひとりで向かったって話だったから、気になって早めに休憩取らせてもらって、ここまで来た」
エビはなんでもないように言って、階段を先に下りていく。私はその背中に向かって、ぽつりと独り言のように漏らした。
「……心配してくれたんだ」
エビの耳はちゃんとそれをキャッチして、私の方を振り返って笑った。
「当たり前だろ。……それにアイツ、年中発情期の雄ウサギだし」
「あ、そのキャラ設定まだ話してないや。本人に反対されたらどうしよう」
「そんなの突っぱねろ。今のアイツにどんな仕事も断る権利なし」