旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
「なんだ、アンタか……」
一気に脱力して、苦笑を浮かべながら身を起こす。そして乱れた髪を撫でつけていると、エビが怖い顔で斜め後ろに立つ千葉くんを睨んだ。
「理子がなぜお前の部屋のベッドに隠れていた」
「いや、それはその……」
慌てる千葉くんを見ていたら、彼に振り回された身としては少し意地悪を言いたくなって、エビに告げ口した。
「千葉くん、私のこと襲う気満々だったんだよー」
「ちょ、蟹江さん! この人の前でそんなこと言ったら……!」
「……ほう。いい度胸だ。ひとの妻に手を出そうとは」
胸の前で指の関節ををぽきぽきと鳴らしながら低い声を出すエビに、千葉くんはすっかり逃げ腰になって情けない声を出す。
「み、未遂ですから! ねっ、蟹江さん、助けてください……!」
「心を入れ替えて真面目に仕事する?」
「しますっ! しますから、海老名さんを止めて――!」
私はその言葉に「よし」とうなずき、エビの肩にポンと手を置いた。
「それくらいで勘弁してあげて? 未遂ってのは本当だから」
エビはスッと手を下ろし、千葉くんに向かって冷たく言い放つ。