旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~
夜になっても止まない雨のせいで、傘をさしていたにもかかわらず、エビと待ち合わせた月島の和風居酒屋に着くころにはずぶ濡れになってしまった。
羽織っていたロングカーデだけでなく、その下に着ているカーキ色のブラウス、ネイビーのワイドパンツも濡れ、一段色を濃くして肌にまとわりついた。
「もー、ホント最悪。最近なにもかもうまくいかない」
個室の前で居酒屋スタッフが貸してくれたタオルを使い髪や服を軽く拭きつつ、私はさっそく愚痴をこぼした。しかし、先に座敷に上がって胡坐をかいているエビは、私を無視するかのようにメニューを真剣に眺めている。
ああそう。私の話なんてどうでもいいのね。ふんだ、薄情者。
精神がすさんでいる私は体を拭き終わるとどすどす座敷に上がり、仏頂面でエビの向かいに腰を下ろす。
「そういえば、なんで個室なの?」
エビとふたりで飲みに来るのは初めてじゃないけど、個室で向かい合うのは初めてだとふと気がついた。
「だってお前、どうせ仕事のことも愚痴るつもりだろ? ここ、そんなに会社からも遠くないから念のため。周りに会社の人間がいるかもって警戒しながら話すのも嫌だし」
「……なるほど」
私は納得してうなずく。そういうことなら、遠慮せず全部ぶちまけちゃおうっと。