旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

「色々って?」
「一緒に暮らしたら、お互い今まで見えなかった部分も見えるでしょ? 生活習慣とか、価値観とか……。それが合わなかったらって思うと、ちょっと不安……かな」

 頼りなげにそんなこと言う理子が意外だった。これまで同期という立場で互いの色々な面は見てきたはずなのに、どうして今さらそんなことで不安になっているのだろう。

「さんざん酔っ払ったあげくうちに泊まった、あの夜の図々しさはどこいったんだよ」

 俺は彼女を元気づけようとして軽く茶化すが、理子は拗ねたように俺を睨んだ。

「あの時とは違うの! その……私の、気持ちが」

 ぽつりと付け足された後半部分を耳にした瞬間、どきりと鼓動が跳ねた。

 なんだよその期待させる発言……。つまり、あの時より俺を男として意識しているからこそ、不安になっていると言いたいのだろうか。……やばい、かわいい。

 運転中でなければ抱きしめてやるのに、ともどかしく思いつつ、とにかく彼女を安心させてやろうと口を開く。

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