【女の事件】とし子の悲劇~2・5世帯のなみだ
第6話
7月31日のことであった。

義弟は、犯されたあとのアタシをスマホのカメラで撮影した。

アタシは、義弟から『人にチクったら、あんたのあられもない姿をネットにばらまくぞ!!』とおどされた。

くやしい…

ものすごくくやしい…

義弟は、この日から1日中遊び回るようになった。

重度のキッチンドリンカーにおちいった義父は、朝から晩まで大量に酒をのんでワケの分からん言葉をグダグダグダグダ言いまくるなど…どうしょうもないドアホになった。

義兄は、西条市大町の酒場街でひと晩中ハシゴしていた。

帰宅したのは、明け方であった。

あいつも家出して行方不明になった。

その一方で、義父が友人の借金の保証人になった問題が放置されていた。

担当の弁護士さんに相談して、支払い免除などの手続きを取ったけど、回答まちなのでどうすることもできない。

こんなことになるのであれば、結婚なんかするんじゃなかった…

武方さんのクチに乗ってお見合い結婚したので、大失敗したわ…

8月2日のことであった。

この日、義兄の職場は正午で仕事が終わった。

午後からは会社の行事ごとの関係で半ドンであったが、義兄は参加を拒否した。

義兄は、昼1時半頃に帰宅した。

この日、アタシは夜7時から新居浜のデリヘル店へ出勤する予定である。

義弟はあの日の夜以降、家に帰らなくなった。

義父は、あいつが行方不明になって以降きわめて危険な状態におちいった。

そんな中で、義兄が帰宅した。

義兄は、すごくしんどい表情をしていた。

「もうしんどい…酒…」

義兄は、冷蔵庫の中からアサヒスーパードライの500ミリリットル缶3本と亀田の柿の種(ツマミ)を取り出したあと、テレビが置かれている広間へ行った。

疲れた表情を浮かべている義兄は、テレビを見ながらビールをゴクゴクとのんでいた。

アタシは、やさしい声で義兄に声をかけた。

「桂一郎さん。」
「なんぞぉ!!」
「今日は、早く終わったのね。」
「ああ、そうだよ!!」

この時、義兄の顔はものすごく真っ赤になっていた。

アタシは、テレビの画面に映っているテレビ愛媛のふるさとバラエティ番組の今治の市民のお祭り『おんまく』の特別生番組を見て、義兄に『職場は午後からおんまく祭りに行く行事があったのね…』と言おうとした。

けど、こわいから言うことができん…

それでもアタシは、義兄に優しく声をかけた。

「桂一郎さん…今日は8月の第1土曜日よね…今日と明日は、今治市民のお祭り『おんまく』の日よね…桂一郎さん…」

アタシが言うた言葉にブチ切れた義兄は、テレビを地デジからBSデジタルにモードを変えたあと、音量を最大値にあげた。

テレビの画面は、BSフジで再放送されている昔の東海テレビの昼ドラのレイプシーンに変わった。

主演女優さんの大河内奈々子さんの強烈な叫び声と布が思い切り破れる音が聞こえていた。

し烈なレイプシーンを見たアタシは、その場に座り込んで震えていた。

その後、義兄は適度の音量に戻して電源を切った。

(ブチッ…)

アタシをイカクした義兄は『テレビなんかおもろないわボケ!!』と言うて、にぎりこぶしを作ってテーブルをドスーンと叩いた。

そして、のみかけのビールと未開封の缶をあけて一気にゴクゴクとのみほした。

アタシはこの時、禎二さんの奥さまがレイプされて亡くなった事件のことをまた思い出した。

こわい…

ものすごくこわい…

その時であった。

(ジリリリン…ジリリリン…ジリリリン)

この時、うぐいす色のプッシュホンのベルが鳴った。

アタシは、電話に出た。

電話は武方さんからであった。

アタシは、にこやかな表情で応対した。

「はいもしもし…あっ、武方さんでございますね…いつも義兄に優しくしていただいてありがとうございます。」

アタシは、電話口の武方さんに『義兄に代わりましょうか?』と言うてから義兄を呼んだ。

「桂一郎さん、武方さんから電話よ。」
「何だよぉ…オレは眠いのだよぉ…」
「武方さんが桂一郎さんのことを心配して電話して来て下さったのよ…きょうは未婚の男性の従業員さんと新居浜の信金の女性の職員さん20人とのお見合いイベントでおんまくに行っているのよ…」
「ワーッ!!」

(ガチャーン!!)

ものすごく怒った義兄は、電話台ごと電話をけとばした。

「桂一郎さん!!どうしてひどいことをするのよ!!」
「やかましい!!武方のクソ野郎のせいで、オレの人生が大きく狂った!!武方の虫ケラ野郎に言うとけ!!仕返しするから覚悟しとけとな!!」

アタシにこう言い放った義兄は、千鳥足で外へ飛び出した。

一体、義兄は何が気にいらないのか?

武方さんが提案したごほうびが、そんなに気に入らないのか?

よく分からない…
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