いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました

***


「おはようございます」

更衣室で制服に着替え、総務のフロアに入ったのは8時55分。始業時間は9時なのでパソコンを立ち上げる時間を考えればギリギリだ。

「おう、今日は珍しくゆっくり来たな」

すでにデスクにいた八木が真衣香と自身の腕時計を交互に見て言った。

「す、すみません。ギリギリになっちゃって朝の掃除できなかったです」
「いや、別にそれはお前の仕事じゃねぇし。つーかどうした、顔おかしいぞ」

八木が隣に着席した真衣香をジッと眺めて言う。

「……顔がおかしいって、失礼です」
「いや、声もおかしいぞ」

いつもよりワントーン低くなって、若干しゃがれてしまっている声は風邪のせいなのか、泣き喚いたせいなのか。わからないまま週が明けてしまった。

「風邪か?てか目も腫れてねぇか、どうしたよ」

「ね、寝不足です、ギリギリに出勤してごめんなさい」

なぜ今日に限って朝一ふらりとどこかに消えることもなく、杉田と打ち合わせしているでもなく、真衣香に焦点を当てるのだろうか……。と居心地の悪さを感じていた。

< 166 / 493 >

この作品をシェア

pagetop