いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「衝撃の大小はあってもなぁ、世の中みんな経験して乗り越えてるから」
乱暴だけど、声は、優しくて。
「その時は無理だ、絶対忘れられねぇって思うんだよ。 みんな同じだ、お前だけは無理だなんてそんなことねぇから、大丈夫だ、絶対。 大丈夫だから負けんなよ」
――その言葉どおり、真衣香も乗り越えていけるんだろうか。
この胸の痛みを。忘れたくても、何をしても消えてくれない脳裏の中、浮かぶ彼を。
「はいぃ……」
涙まじりに返事をした真衣香に、八木は静かに言った。
「鍵、ポストに入れとくから起きたら取れよ」
頷いて、真衣香はにっこりと笑顔になる。
何日ぶりかに、笑えたような気がした。
「あり、がと……ざいます、八木さ、ん」
眠気から、たどたどしくなってしまったように思うが、精一杯の感謝を伝えると。
いつも真衣香を雑に扱う八木からは想像もできない……。そんな優しい笑顔が視界に入った。
朦朧とした意識が見せた幻か、はたまた夢か。
現実ではないのかもしれないけれど。
優しさが、こんなにも潰れそうな心に染みるなんて真衣香は知らなかった。
そして、恋の傷がこんなにも、全てを支配するなんて、知らなかったんだ。
(でも乗り越えなきゃ……、私が立ち直らなきゃ坪井くんも気が重いでしょ)
薄れていく意識の中で、繰り返し聞こえたのは『頑張れ、負けるな』と言った八木の声。