いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
忘れた振りをしても、考えないように努力しても、あの夜に囚われたままの心は、すぐに涙を流させる。
滲んだ視界を支配する彼の切なそうな顔だって、そんなの知らないって。いくらでも目を逸らすことができる。
涙を拭って、バッグを握り締めドアを開けた。
そのまま振り返らないで駅に向かって走った。
心の奥底で叫んでる声に気がつかない振りをする。
信じると言った自分、信じられないと言った自分。
深く突き詰めると答えに辿り着いてしまう、きっと止まれなくなってしまう。
(だからいいの、気がつかなくていいの、わからないままでいい!)
だって、もう傷つきたくない。
寒くて寒くて、心も身体も凍えてしまいそうだった夜を繰り返したくなどない。
――駅にたどり着き、人混みに紛れてしまう前に、ゆっくりと息を整える。
『お前のことが、怖かったんだよ』
なんて。今にも崩れ落ちてしまいそうな顔で言うのはどうしてなのか。崩れ落ちてしまいたいのは真衣香の方だ。
そう思うのに、どうして。
(あの夜、ひとりになって、坪井くんはどんな顔してたの?今みたいに泣きそうになってたの?どうして怖かったの?何が……)
”何が怖かったの?”と、抱きしめてしまいそうな自分に、気がつかない振りをする。
精一杯に。
夜空を見上げた。
透き通るような空気に、鮮やかな星の光。
どうして今頃、鮮明に映るのか。
あの夜は暑い雲に覆われて、その光を見せてくれなかったのに。
なぜ、今になって。