いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
ついさっきまで川口に怯えていたはずだ、自分と同じように。だったら今は、怖がらせてはいけない。
「よかったら、話して。今、総務は誰もいないし、人事も部長と数人しか残ってなかったよ。残ってる人たちはバタバタしてたし、そんなにこっちの声は聞こえないからね」
そう伝えて、どれくらいの沈黙が続いたのだろう。
手に嫌な汗をかく。
一階に戻って小野原や森野に、笹尾のことをお願いしたほうがいいのだろうかと。真衣香が思い悩んでいると。
「私……、もう、嫌なんです」
ぽつりと小さな声が聞こえた。「え?」と真衣香が聞き返すと、笹尾の目から大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちる。
「さ、笹尾さん!?」
泣かせてしまった!と。驚いた真衣香は笹尾の背中に手を添えて宥めるように撫でた。
それを合図にしたように、笹尾の口からたくさんの言葉が溢れ出す。
「か、会社、もう嫌なんです、もう辞めたい……!川口さんはすぐ怒鳴るし、坪井さんみたいに事務に早く帰れって気遣ったりもしない!面倒なことは全部押し付けてくるし、もう、もう限界です」
「笹尾さん……」
聞きたいことはたくさんあったはずなのだが、苦しそうな声に、何も発することができなくなってしまう。
「いっつも、小野原さんや森野さんが帰ってもひとりで残業して……家に帰ったら、ご飯食べる気力もないんです」
「……うん」
「何かする時間も暇もなくて、すぐに寝なきゃ次の日に響く時間になって……起きたらすぐ会社で。どこにいても川口さんに怒鳴られてる声ばっかり思い出して」
泣きながら小刻みに揺れる身体。真衣香は艶のある綺麗な黒髪を撫でた。
すると弾かれたように顔を上げて、笹尾は涙で濡れた顔で真衣香に視線を合わせた。