いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました



***


水が滴る髪を掻き上げた。


アイボリーの壁が、ライトのせいかオレンジ色に煌めいて目に映った。それをボーッと眺めたまま蛇口を捻ってシャワーの水を止める。

クリアになった視界で見渡せば家の風呂場から随分と物が減ったことを今更ながら実感した。
ここに限らずだけれど、女が持ち込んでいた化粧品やバス用品や小物類。それらを処分したならこんなにも自分の部屋は殺風景になるのか……と。
坪井はここ最近、しんみりと実感する。そんなことを何度か繰り返していた。

(まあ、処分したところで……なんだけど。あいつに言い訳するみたいに見せてさ、謝れるわけでもないし)

そう思ったなら、自分を嘲笑うかのような声が漏れ出る。これも、最近のいつもの流れだ。
ドアを開けて、バスタオルを手にし、左横にある鏡を見る。
代わり映えのない、けれどなんとなく頼りない。そんな自分の顔が映っていた。



坪井は、昔から朝が弱い。夏はもちろん冬でも、目を覚ますためにシャワーを浴びるのが日課となっている。
もともと定時よりも早めに出勤するようにはしていたが、ここ最近はそれよりも早く家を出ることが多かった。
理由は『忙しいから』『早く帰りたいから』そんなふうにさまざま自分を誤魔化してきたけれど。今ならそうじゃないと迷わず言える。
"彼女"に会いたかったからだ……と。

(今更言えてもなぁ、どーしようもないんだけどさ。ほんとバカじゃん、俺)

下着とスラックスだけを身につけて、エアコンが効いた部屋でぬくぬくとバスタオルで上半身を拭きながら、ベッドの上に置いてあるスマホが目についた。昨晩は眠気に負けて無視していたけれど、何度もチカチカと画面が光り、何らかの通知を繰り返していた。

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