いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


目元を押さえつけていた手をゆっくりと離し、隼人を見ればモジモジと身をよじらせて照れているような動作をしていた。「気持ち悪いって」と言いながら、頭を引っ叩く。

「痛いだろが!」と喚いた隼人は、けれどすぐに「……こんなとこでする話でもねぇけどさぁ」と、もごもご言った後咳払いをした。

「真面目な話、俺はあの頃のお前には同情してるぞ」
「あの頃って」
「青木たちのこと、ちょうどおばさんのことでゴタゴタしてた時じゃん」

「あー……、そうだったかな」と、呟いた坪井はカウンターテーブルを背もたれにして、不規則に点滅するカラフルなライトを見上げた。

青木とは、例の中学の頃一悶着あった坪井の初恋の女だ。

「元々の、なんつーの? お前の逃げ癖も少なからず原因だと思うけど、あれは……女が無理になっても仕方ないなって思って俺は見てたぞ」
「へー、初耳。今更どうしたの」
「……捻くれた女の扱い方も、何て言えばいいかわからんかったとこある。こいつ最低だなって思ってても、言い出しにくかったてゆーかな。お前の言う通り今更だけどな」

(……だからって、人を道具にしていい理由にも傷つけていい理由にもならないんだよな)

騒がしく流れる音楽が、ただの雑音になっていくのがわかる。それだけ、この会話が坪井の心奥を揺さぶっているということか。

下唇を噛んだ後、軽い雰囲気を忘れないように、いつも通りを心がけて声を出した。

「まあ、言ってもあれいつ? もう親に頼る歳でもないじゃん、家のこと関係ないって」

はは……っと、語尾に乾いた笑い声を付け加えておいたら。

「調子乗んなよ、中学生男子なんてガキだよクソガキ! 親にイライラしたもんをぶつけんのも甘えだろ」

意外にも勢いよく隼人が言い返してきた。

そして、言われても経験がないものだったからかピンと来ず、坪井は曖昧にうなずいた。

「八つ当たりなんてなぁ、母親くらいにしかできなかったって。少なくともあの頃の俺は!」
「……そんなものなの?」
< 336 / 493 >

この作品をシェア

pagetop