いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「……ん、やだ、お願……い。さ、触らないで、ください」

身をよじりながら懇願するように声を出した。
そのすぐ後に、八木が息を飲んだのか、不自然な呼吸音が聞こえてきて。何かを押し殺すよう、地面を這うような低い声を出した。

「……残念だな。納得させるどころか、今んとこ、お前煽ってるだけだって。俺のこと」

煽るだなんて。そんなの身に覚えがない、と。必死に首を横に振り続ける。
けれど八木は真衣香を押さえつける力を緩めようとはしない。

「やめろよ、その顔。これ以上興奮させてどーすんだ?」
「さ、させてな……っ」

「させてんだよ」と、抵抗する真衣香の髪の毛を、ぐしゃりと掴んで強い口調で言った。

「なあ、俺納得できる理由で振ってくれって頼んだよなぁ? 早くしろって、ほら」

しかし、次に聞こえたのは、熱のこもった掠れる声。こんな八木の声を真衣香は知らない。会社で抱きしめられたこともあった、触れ合う距離で話をした。でも、その中のどんな時でも、胸が痛くなるような……切なく苦し気な声を聞いたことなどなかった。

そんな声で、ほら。と言われても。
理由なんてそれしかない。他に何も言いようがない。
八木のことは、好きか嫌いかで答えろというならば、もちろん好きだ。腹を立てることも、頭を抱えることも多かったけれど。仕事でも……プライベートでも何度も助けられてきた。
その気持ちは、兄がいればこんなふうなのかと錯覚してしまいそうになるほどに、身内に向ける感覚に似ていて。

「おい、バカだろお前。この状況で黙り込むって、意味わかってるか」
「……っ!?」

"八木は真衣香に何を言わせたいのか"

求められている答えを探していると、力強い手が真衣香の黒いニットを上げ、あらわになった胸元にチュッと音を立ててキスをした。何度も、左右、上下、いろんなところに。

恐ろしさのあまりきつく目を瞑ったのと同時。八木がブラジャーのホックに手を掛けて。

冷たく無機質な声で言い放つ。

「合意だよ。すぐヤられんぞ」

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