いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
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八木と別れた後、真衣香はすぐに電車に乗った。夜の11時を過ぎているが電車の中はそこそこに混み合っており、見渡すも空席はなかった。
(……ううん、空いてても座れる気分じゃないよ)
小さく首を振って、ドアの前に立ち、スマホを取り出した。
そうして、意を決し坪井に連絡をしたけれど、待っても待っても既読にはならない。
――誰かと一緒にいるのかな。
そんな不安に身が怯んだが、今の勢いを失ってはいけない気がした。
(とりあえず、坪井くんのマンションの最寄りの駅まで行ってから……考えよう、うん)
ちょっとストーカーみたいかな。なんて、浮かんだ疑問を振り払い"連絡はつかないけれど部屋まで押しかける"という自らの選択に対し真衣香は、電車の中でひとりコクコク頷き、勝手に肯定を繰り返した。
そんなことをしながら、何駅かを立ったままで見送っていると……。
窓から見える景色が、見覚えのあるものに変わって行く。あの冷たい夜が真衣香の脳裏に蘇ってきて、思わず震えだしそうな足に力を込めた。
(こ、この駅で……間違いないはず)
と。あの日の記憶を頼りに恐る恐る電車を降りて、早足で改札を抜けた。
見覚えのあるのは東出口と書かれた看板がある、その先にある街並みだ。
(と、とりあえず……出てみようかな)
自分の記憶だけを頼りに坪井の住むマンションを目指すことにした。
歩きながら、次は電話をかけてみた。何度か繰り返しても「電源が入っていないため……」と、綺麗な声だが機械的。そんなお馴染みのアナウンスが流れ、繋がらない。
(誰と、いるのかな……。スマホの電源切るくらい、大切な相手なのかな)
もしくは、電源が切れていることにさえ気が付かない。それほどまでに夢中になれる相手と共に過ごしているのだろうか。
……不安が渦巻いて、息苦しい。