いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


どれくらい、黙っていたんだろう。
「聞いてるの?」と優里の声がして坪井は我に返った。

すると途端にざわざわとした雑音が耳に入る。

「あれ誰?」
「坪井くんの彼女?」
「な、わけないじゃん。立花さんなんでしょ」
「別れて新しい人かな」

などと、また好き勝手に話を膨らまされている。
よくまあ次から次へと思いつくものだな、と肩をすくめてしまう。

「ごめんね、ちょっと場所変えてもいい?」

その声の群れから視線を優里に戻す。
そこには、やはり睨みつけるよう、攻撃的な目があった。

「……別にいいけど、今日真衣香はもう帰ってるから。確認してから来たし、私はここでも何にも困らないけど?」
「俺が困るんだよ、あいつの耳に余計なこと入れたくない。優里ちゃんも一緒なんじゃないの」
「だから気安く呼ばないでよ」
「でも、青木さんだと被るし」

はぁ……、と優里は心底嫌そうに息を吐いた。

「芹那と?」
「そうだね」
「まぁ、仕方ないけど」

不快感を押し殺すように低い声を出した優里。
嫌われたもんだな、と考えてすぐに思い直す。予想もしていなかったけど、真衣香と青木芹那。その両方と関わる人間が存在してしまっていたのだから致し方ない。


***



場所を変えようと言ってやって来たのは駅近くの小さなカフェだった。
外で話している方が人目につくからと思ってのことだった。

「私、特に何もいらないから」と言い残して先に席についた優里。
「わかった」と軽くうなずいてから坪井は、いやいや俺だけ飲んでるわけにもいかないだろう、と。レジでホットコーヒーをふたつ注文した。

もちろん、優里と自分のものだ。
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