いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
  

 そんなふうにまわりの人たちが視野に入れてくれて認め出してくれて。

「自信なくって冴えないばっかりだった私に涼太くんみたいなかっこいい彼氏ができちゃったせいだね。二年前に」
「え、俺? 回避しようがないじゃん」

 ポカン。とした坪井の表情に吹き出しながら、真衣香は続けた。

「私が変わったのは、涼太くんに恋してからだからね。仕方ないね」
 
 真衣香の言葉に坪井は、ふっと笑って「冴えないってとこは断固拒否したいところだけど」と言いながら肩を抱き寄せる。

「てかかっこいいっていうなら真衣香の方でしょ」
「ええ、何それ」
「俺、お前以上にかっこいい人間知らないよ」
「私だって涼太くん以上にかっこいい人、知らない」

 見つめ合って、互いに吹き出し、笑い声が溢れた。

 そうして、そっと触れあった唇。
 もっと、もっと、と。深くなるそれを遮ったのはスマホから聞こえてくる着信音だ。

「あ! 優里からかも。明日の約束の話、途中で終わってたから」
「え、ちょ」
「芹那ちゃんのとこ2人目なんだって、会いに行ってくるね週末。年子かぁ大変だよね」
「へぇ~、いやめでたいけど、あーーもう、優里ちゃんいっつもタイミング悪いんだって!」
  
 不満そうな声を張り上げた後「盗聴でもしてんのかな」と、嘆く声が部屋に響いた。
 それがやがて笑い声に変わって、夜が更けて、朝になる。
 

 繰り返すそんな日々の中思うこと、いつも、願うこと。

 どんな未来でも、互いを想い合っていたい。
 そんなふうに願える今が、あたりまえのように繰り返される毎日。
 幸せのきっかけは、笑いながら言ったけど、冗談なんかじゃない。

 『じゃあさ、付き合ってみる? 』
 『俺も今彼女いないの』

 いきなりの提案に、真衣香の世界が急激に輝き出した、やっぱりあの日だ。
 
(冴えない私に、イケメン彼氏ができちゃった日)

 思い返すと甘くて、甘くて、時々涙の味を思い出す。

 嘘つきな言葉を、二人で真実にして。
 正解も間違いも、まだ一緒に重ね続けている、その途中。
 大好きな人と歩き出した日から、今もずっと続いてる道だから。
 

 
< 484 / 493 >

この作品をシェア

pagetop