これは恋ですか。
変わり者との出会い
「失礼します。開発部の久我(くが)です。専務は?」

部屋で一条専務の到着を待っていると、ドアがノックされた。

やってきたのは、作業着の男性。
髪はボサボサで前髪が目にかかって顔がよくわからない。せっかく背が高いのに、猫背で姿勢が悪い。
作業着もなんだか汚れている。

「すみません、一条商事の会議が押していて」

「そっか。忙しい方だからなぁ。
話したいことあるんだ。待たせてもらっていい?どうせ、そんなにかからないでしょ?」

ここで、待つ?
嫌だな。
こんな薄汚れて清潔感のない人と二人きりになるなんて。


「それが、時間が読めなくて。すでに予定を40分もオーバーしていますし。
専務がいらしたら、ご連絡します」


「今、君、こんな汚いヤツと二人きりになるなんて嫌、とか、思ったでしょ」


「あ…」


まずい、バレていた。


「びっくりするくらい素直な人だね。
別に、取って食ったりしないよ。
確か、九条さんだったよね?
専務に聞いてるよ、あの九条家のお嬢様だったよね?」


あの九条家。そう言われるのが、一番嫌い。

かつては、貴族と呼ばれた古い家柄。先祖の残してくれた無駄に大きな古い家と土地はあるけど、今はお父さんは大学教授、母は専業主婦の普通の家。


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