俺様副社長に娶られました
「失礼します」
片手にお盆を持ってドアを開けると、わたしは瞬時に固まった。
室内にいたのは四人ではなかったからだ。
応接セットにはお父さん、お母さんの向かい側に慎ちゃんがいて、その隣に創平さんが座っている。
そして創平さんの後ろには、女性がひとり立っていた。
どうしよう、椅子は四脚しかないし、お茶も四人分しか持って来なかった。
オロオロと立ち往生しているわたしの様子が見て取れたのか、創平さんの背後に立っていた女性がわたしに向かって頭を下げる。
「秘書の越谷(こしがや)比奈子(ひなこ)です。本日同行させていただきましたが私は立ったままでおりますのでどうぞお気になさらないでください」
顔を上げると、彼女はとても優雅に微笑んだ。
茶色くて長い髪は綺麗に巻かれていて、体のラインを強調しすぎない黒の細身のスーツがとても良く似合っている。
笑い方も、自然と自分が一番美しく見える角度や表情を心得ているのかと思うほど、とても美しくて目を見張るほどだった。
「あ、はい……」
わたしはぽかんとした表情で頷く。
秘書って、二度ほど会ったことがある、実沢さんじゃなかった……?
代わったのかしら?
首を捻りたい気持ちのまま、わたしはおずおずと創平さんに近づく。
事業計画書を広げて仕事の話をしていた創平さんの言葉が途切れた。
「失礼します」
屈んでお茶を置こうとしたときだった。
不意に頭に浮かんだ過去の出来事が、現実の今と交錯した。
料亭で叔母さんが、婚約者だと思っていたのは〝茶髪の美人さん〟だと言っていた。
それから、神社で創平さんに電話がかかってきたとき、画面に表示されたのは〝子〟が付く名前だった。
「……っ」
なんだろう……もやもやする。
心の中がなかなか晴れない真っ黒な霧に覆われたみたいに、重苦しくて仕方ない。
「沙穂?」
一時停止をしたみたいに宙にお茶を浮かせた体勢のまま、動かないわたしを不審がるような創平さんの声に、ビクッと肩を揺らす。
「あ、はいっ」
我に返ったわたしが焦って湯呑を移動させると、波打った熱いお茶が茶碗から溢れ、ちょうど創平さんの手元付近のテーブルに数滴溢れた。
「すみません……!」
慌てて布巾でテーブルを拭こうとしたわたしより、越谷さんの動きの方が遥かに無駄がなく適切だった。
片手にお盆を持ってドアを開けると、わたしは瞬時に固まった。
室内にいたのは四人ではなかったからだ。
応接セットにはお父さん、お母さんの向かい側に慎ちゃんがいて、その隣に創平さんが座っている。
そして創平さんの後ろには、女性がひとり立っていた。
どうしよう、椅子は四脚しかないし、お茶も四人分しか持って来なかった。
オロオロと立ち往生しているわたしの様子が見て取れたのか、創平さんの背後に立っていた女性がわたしに向かって頭を下げる。
「秘書の越谷(こしがや)比奈子(ひなこ)です。本日同行させていただきましたが私は立ったままでおりますのでどうぞお気になさらないでください」
顔を上げると、彼女はとても優雅に微笑んだ。
茶色くて長い髪は綺麗に巻かれていて、体のラインを強調しすぎない黒の細身のスーツがとても良く似合っている。
笑い方も、自然と自分が一番美しく見える角度や表情を心得ているのかと思うほど、とても美しくて目を見張るほどだった。
「あ、はい……」
わたしはぽかんとした表情で頷く。
秘書って、二度ほど会ったことがある、実沢さんじゃなかった……?
代わったのかしら?
首を捻りたい気持ちのまま、わたしはおずおずと創平さんに近づく。
事業計画書を広げて仕事の話をしていた創平さんの言葉が途切れた。
「失礼します」
屈んでお茶を置こうとしたときだった。
不意に頭に浮かんだ過去の出来事が、現実の今と交錯した。
料亭で叔母さんが、婚約者だと思っていたのは〝茶髪の美人さん〟だと言っていた。
それから、神社で創平さんに電話がかかってきたとき、画面に表示されたのは〝子〟が付く名前だった。
「……っ」
なんだろう……もやもやする。
心の中がなかなか晴れない真っ黒な霧に覆われたみたいに、重苦しくて仕方ない。
「沙穂?」
一時停止をしたみたいに宙にお茶を浮かせた体勢のまま、動かないわたしを不審がるような創平さんの声に、ビクッと肩を揺らす。
「あ、はいっ」
我に返ったわたしが焦って湯呑を移動させると、波打った熱いお茶が茶碗から溢れ、ちょうど創平さんの手元付近のテーブルに数滴溢れた。
「すみません……!」
慌てて布巾でテーブルを拭こうとしたわたしより、越谷さんの動きの方が遥かに無駄がなく適切だった。