桜の咲く頃……… 君を想う
「………………………………………はい…………。」

真っ赤な頬で…………

俯いて答えた……………yes。

……………………マジか?!

って言っても………手なんか出さないけど。

ふと、制服姿の彼女が浮かんだ。

前にも………

こんな思いをしたことがあったよなぁ。

大切だと思えば…………

自分の意にそぐわなくても………妥協する。

相手を優先させる彼女。




「先生、今日は私が手伝う!!」

毎回お願いしていた、古典の書き込み。

黒板に前もって書き写す俺を、自然に手伝ってくれていたのは

彼女だった。

手伝って欲しくてわざとギリギリに教室に入っていた俺は。

頭一つ分小さい彼女が

俺の為に背伸びして、綺麗な文字を綴る時間が幸せだった。

目が合うと

恥ずかしそうに微笑む………俺だけが見られる笑顔。

たぶん…………彼女も俺と同じ思いだろうと

確認する時間でもあった。

そんな時間を壊したのは………

彼女と同じクラスの生徒。

彼女も俺に好意を持ってくれていることは、気づいていた。

……………というか。

彼女が俺に好意を持っていることは

クラスの全員が知っていたのだ。

だって彼女は、恥ずかしがる事も

遠慮することもなく、堂々とアピールしていたから。
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