桜の咲く頃……… 君を想う
「それから………
誰にでも優しく声をかけないこと。
特に男には。」

「でも…………
荷物を持ちながら改札を抜けてたら、電話がかかってきてて。
大変そうだったから「お手伝いすることはないですか?」って…………。」

「その結果どうなった?」

「……………………お礼がしたいから、お茶しましょうって誘われて…………。」

「困っただろう。
あんなことしてたら『俺に気があるのかな?』って
勘違いする奴がいるんだよ。
お茶だけならまだしも、つき纏われたり。
いつの間にかつき合ってることにされたら、大変なんだぞ!
優しいのは良いことだけど。
時と場合、後は人による。」

……………………………。

まだ何か言いたそうな………そんな表情でこちらを見ている。

「……………何?」

「先生の大好きな絵本の中では…………
人を信じて………助け合って…………。
先生もそう思ってると……………思ってた…………。」

彼女の言いたいことは分かる。

学校の先生の俺は、そう教えてきたし

それが俺達教師のイメージだと知っている。

子供を信じ、愛情を持って接し

正しいことを導く存在。

そんな教師の俺が

人は相手を見て親切にしろ。

悪い奴もいる。

信じるな。

…………って言ったら、躊躇うよなぁ。

分かるけど……………

現実社会は、そんなもんだし。

怖いってことも教えないと、世の中は渡れないんだ。
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