笑顔の行方

受験生

コンコン。

「笹山部長、会長がお呼びです。」

ニヤニヤ薄ら笑いを浮かべ

ドアにもたれ掛かって俺を呼ぶのは。

兄貴の秘書をしている洋介だ。

コイツがこの顔で『会長』の使いをする時は

ろくなことがないと決まっている。

………………はぁ~っ。

一番初めに呼び出されたのは、今から二十年近く前だ。

あの時は、兄貴の見合いをぶち壊し

親父を会長職から引きずり下ろす手伝いを

洋介と二人でさせられた。

その後も

不正をはたらく社員のあぶり出しや

セクハラをしている上司の摘発。

プライベートだと、兄貴と咲の結婚式の司会と………。

とにかく、面倒事ばかり押しつけられる。

「今回は、何だって?」

嫌そうな俺に。

「今回は寧々関係だから、厄介だぞ。」と

ゲッ。

兄貴夫婦に子供はいない。

『おおパパ』と呼んで、小さい頃からなついてる寧々は

自分の娘のように思っている。

この会社も

兄弟の俺や兄貴じゃなく

自分に似て頭のキレる寧々に継がせると、会うたびに言っている。

寧々の事で、面倒じゃない訳がない。

おまけに

寧々は高3の受験生。

昔のように甘えなくなったし、会社にも顔を出さない。

俺の彼女というのも気に入らないのに

洋介の母親の命令で同じ家に住み、いつも一緒なのは

ホントに腹立たしいようだ。

事あるごとに

『清いままの付き合いか?』

『未成年に手を出すと大変だぞ。』と

寧々との交際に、文句をつけてくる。

そのくせ寧々に嫌われたくないから

寧々の前だと寛容なのだ。

とにかく!!

曲者で裏表が有り、厄介な存在なんだ。
< 101 / 143 >

この作品をシェア

pagetop