笑顔の行方
事の起こりは1本の電話。

兄貴から直々の要望で『1ヶ月ニューヨークに出張してくれ』と。

はぁっ!?

1ヶ月!!

何でも、新しいホテルを建てるらしい。

しかし…………1ヶ月とは。

社会人として、上の命令は絶対。

まして、新しい事業を任せられ手掛けるのは楽しいはずだ。

いつもなら、二つ返事でオッケーを出すが………

今回は、ホントに行きたくない。

別に仕事が嫌な訳ではない。

むしろワクワクする内容だ。

問題は……………

家を空けたくないのだ。

後、2ヶ月で二十歳になる寧々。

あどけなさは残るものの、スッカリ大人の女性に成長した。

化粧…………寧々に言わせると『メイク』らしいが。

上手くなり、華やかさも加えられた。

大学も2年が過ぎ、交友関係も広がってるようで

あまり時間差なく帰宅する日もある。

保護者としてなら注意も出来るが…………

彼氏としては

束縛の激しいオヤジに見られるのが嫌で

ヤキモキするも、怒れないでいる。

それなのに、1ヶ月の出張。

おばさんや洋介に頼んで行こうとは思うが………やはり心配だ。

なんせ、おばさんは相変わらず破天荒。

洋介は、寛容で暢気だから。

寧々の行動を伝えるも

「大丈夫、大丈夫。
まだ真面目だわよ!」

「俺達だって、散々遊んだだろう。
ちゃんと彰人のところに帰って来るから、心配しなさんな。」と

全く取り合わない始末だ。

ふぅっ。

…………………行かないといけないよなぁ。

心を日本に残したまま、飛び立った。

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