笑顔の行方
「行ってきます!」

「お帰り~!」

当たり前に聞いていた日々も…………

いよいよ後3日で終わる。

あれほど悩んだのが嘘のように、穏やかで楽しかった寧々との時間。

あちらこちらで、笑顔と笑い声が聞こえ。

毎日がキラキラと輝いていた。




3歳で母親と死別して施設で生活。

やがて兄貴の家に引き取られ

再び家族が出来ると期待した気持ちは裏切られ。

虐めの毎日だった。

兄貴に連れ出されて、やっとまともな生活を送るようになったが。

愛情に満たされた生活というのとは…………

程遠かった。

男二人、生きていくのに必死だったから。

咲が来て、初めて味わう暖かい家庭。

それも…………兄貴と咲がつき合うことで

俺の手のひらからこぼれ落ちていったが…………。

もう2度と期待しない!

俺に暖かな家庭は……無縁なんだと思って過ごしてきた。

それがここにきて

年の離れた彼女からもたらされるとは…………。

正直驚いた。

世話を焼いて、大きくして。

いつか俺のもとを飛び立つものだと思っていたから…………。

今は

後3日で終わりがくることが…………怖いんだ。

手元に置いときたいよ…………。

たった3週間。

けど…………大きく揺れる結果になった………………時間だった。
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