笑顔の行方
「おばさん、兄貴………洋介、サンキュウ。
マンションは………手放すよ。
それが、今の俺のケジメでプライドだから。
みんなが俺の心配をせずに
安心して寧々を預けられると判断した時
今度は、二人の新居を手に入れるよ。
寧々………。
俺の生い立ちを聞いてくれるか?
俺は、寧々が思う程大人ではないんだ。
おばさんがいうようにヘタレで、トラウマを抱えて生きてきた。
寧々には知られずに大人の顔をしていようと思っていたけど。
ホントは………
一緒に生きていく寧々にこそ、話さないといけなかったんだよな。」

話しの内容は解らないが………

それでも、一緒に生きる為に全てを話すと言った俺に安心したのか。

さっきまでの切羽詰まった顔を緩め

優しく微笑んだ。

「ちょっと彰人!
おばさんじゃないでしょう。
『ママ』って呼びなさい。」

酔っ払いのおばさんは

さっき良いことを言ったのが嘘のように、くだをまいているけど。

それでもおばさんの心の奥にある愛情には………

感謝しかない。

「彰人、良かったな。」

親代わりの兄貴の穏やかな笑顔に

ずいぶん心配をかけていたんだと気づいた。
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