婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 今日の朝食は二種類のパンとシーザーサラダ、スクランブルエッグにソーセージやフルーツと食べやすいものがたくさん。

 ここ一週間のなかで一番食べることができていると、看護師さんが元気な声で「失礼します」と顔を出す。

「お食事中すみません。今日のお昼過ぎに先生の診察を受けてもらおうと思っているのですが、どうでしょう?」

「退院できるんですか?」

「そうですね。食事もとれるようになってきましたし、退院して点滴に通うという形にしても問題ないはずです」

「分かりました。よろしくお願いします」

 やった。家に帰れる。

 個室だからのんびりできたし、至れり尽くせりだったので特に不自由はなかったけれど、やっぱり自分の家で過ごせるのが一番いい。新さんの負担も減らせる。

 退院するとなると迎えが必要になるので、お母さんと新さんに連絡を入れておいた。

 昼食に出された梅のおにぎりとお味噌汁とサラダを食べ終わったタイミングで点滴が終わり、看護師さんを呼んで針を抜いてもらう。

 久しぶりに両腕が自由になり、それだけで両手を上げて喜びたいくらい嬉しかった。

 それからしばらくして診察室に移動して、先生にお腹の様子を診てもらう。

「うん、心臓も元気に動いているし問題ないね。つわりも落ち着いてきたんだよね?」

 初めて病院を訪れた時、丁寧に話をしてくれた年配の先生が穏やかな声で言う。
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