婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「そうですね……わがままを言っていいのなら、今の私、いろいろとボロボロで魅力の欠片もないですけど、キスしてほしいです」

 情けなく笑いながらお願いしてみる。

 術後は水分をとれないので、乾ききった口の中は不快感でいっぱいだ。髪もボサボサだし、陣痛の際にかいた汗で肌はべたついている。

 こんな状態の私にキスをしてほしいなんて、これ以上ないわがままだよね。

「茉莉子に魅力がない時なんて一度だってなかったけど」

 嘘ばっかり。昔、私に吐いた暴言を忘れるなんて都合がいいんだから。

 それも今ではいい思い出だ。

 緩んだ口元に無表情で綺麗な顔が近づいてきて、そっと瞼を閉じた。

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