婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 新さんは口元に手をあてて軽い咳払いをした。

「これにはヤキモチを焼くんだな」

 以前海の見えるレストランでの会話を指しているのだろう。あの時とは比べ物にならないほど好きな気持ちが大きくなっているのだから、ヤキモチを焼いたり不安になるのはあたり前の感情だ。

「……夫婦なのだから当然です」

「余計な不安を煽りたくないし、言う必要もないと思っていただけだと分かってほしい」

 先に念を押されて、なにを言われるのだろうという緊張感から無意識に背筋が伸びた。

「元婚約者だ」

 最悪な事実を告げる顔は無表情で、感情が読み取れなくて反応に戸惑う。

「元、婚約者ですか……」

 少なくとも私との婚約が決まった五年前からの知り合いで、いまだに連絡を取り合う仲なのよね。それってどうなの?

 女性との関係を知って余計に胸のもやもやは増すばかり。
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