初めてのお見舞い ~15年目の小さな試練 番外編(1)~
 みんなが帰った後、ハルをベッドに寝かせて、同じ部屋でオレは課題を片付ける。

 途中、よく分からない箇所が出て来ると、ついハルの方を振り返ってしまう。オレが頭を悩ませるところも、ハルにはまったく問題がないようで、いつも考えることもなくサラリと教えてくれる。

 たまに、ハルの頭の中は一体どうなっているんだろう?と思う。

 だけどきっと、それは、ハルが幼い頃から、ずっと、コツコツと積み重ねてきたものの集大成。テスト前しか勉強しないようなオレとは違って、ハルはきっと体調が許す限りいつも勉強していたのだろうから。

 だから、ハルの頭の良さをねたんだりするのは、絶対に違うと思うんだ。

 そんな事を考えていると、腹の奥から、また怒りがふつふつと湧き上がって来る。

 ……いや、それはもう終わったことだから。

 決して忘れられないし、忘れてはいけないとは思うけど、ここで怒りを再燃させるのは違うだろ。

 ふうっと息を吐き、深呼吸をする。

 ……ハルの顔見て落ち着こう。

 やりかけの課題を置いて、立ち上がると、大きく伸びをする。

 やっぱ、身体動かすと気持ちいい。

 そっか。ハルがコツコツと頭を鍛え続けてきたのだったら、オレは身体だな。

 オレより鍛えている人なんて幾らでもいるだろうけど、オレも結構頑張ってる方だとは思う。
 多分、ハルが勉強を意識し始めるのと同じ頃には、オレも身体を鍛えることを意識し始めていた。

 まったく方向性が違うけど、同じくらいの年月頑張って来たというハルとの共通点を見つけて、オレの気持ちは大きく浮上する。

 気が付くと表情が緩み、笑顔が溢れる。
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