逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~

「樹利亜だってそうよ。…いっつも、私の事バカにしてたから…」

「ん? 樹利亜が? そんな筈ないだろう? 樹利亜は、あんたに酷い事されても、あんたの事見捨てないでいてくれたじゃん」

「そうよ、そうせざる終えないように私がしたんだもの」

「ふーん…そこまでしなくちゃいけなかったのか? 」


 芹亜はフッと一息ついた。


「私は里田家の養女だった。…樹利亜は、養父が再婚して、再婚相手が連れてきた連れ子だった。…私が5歳の時に、養父が再婚して樹利亜が来たの。…特別差別されていたわけじゃないけど、いつも…樹利亜は得をして、私は損をしていたわ。…」

「なんであんたが損するわけ? あんたはそんだけ美人で、樹利亜は真逆じゃないか。損するなら、樹利亜の方じゃねぇの? 」

「違うわよ。樹利亜はみんなが驚くほどの、美人で。私は、驚くほどブサイクだったの」

「はぁ? 」


 芹亜はバッグから一枚の写真を取り出した。

 テーブルの上に置かれた写真には、 ブサイクな女の子と綺麗な女の子が映っていた。


「これが、本当の私。ブサイクなのが、私よ。そして、隣りの綺麗な子が本当の樹利亜」

 
 忍は写真を見て、初めて樹利亜の声を聞いた時に見えた顔を思いだした。


 声だけだったが、電話の向こうに見えた顔があった。

 実際に会った樹利亜は違ったが、この写真の樹利亜はその時忍が見えた女性の顔だった。


「綺麗な樹利亜は、いつも私の事をバカにしていたわ。口には出さないけど、いつも私が好きになる男は、樹利亜に夢中になるし。養父だって、樹利亜ばかりひいきしていたわ。私はずっと、樹利亜にコンプレックスを抱いて生きていたの。どんなに優しい言葉をかけられても、どうせ腹の中で笑ってるって思っていたから。私が必死になって、医者になったのに。樹利亜は、いとも簡単に弁護士になんてなったのよ。まるで私に対抗しているかのようにね」


「樹利亜は、弁護士だったのか? 」

「そう、でもあんなブサイクになった事で。せっかく叶った弁護士の道も、閉ざされたけどね」

「ブサイクになった? それは、どうゆう事だ? 」

「私が、樹利亜を無理やりブサイクに整形したの。寝ている間にね」


 はぁ? なんて恐ろしい奴なんだ? 

 忍は芹亜の話しに恐怖を感じたが、ちょっと呆れてしまった。
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