逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~

「面白かったわよ。目が覚めて、自分の顔が醜くなって。信じられない声を上げて、ずっと泣いているんだもん。あの顔で、仕事に行っても別人だって言われて追い出されるし、外に出ればみーんな樹利亜を非難して、酷い扱いをするの。昔の私と同じことやられて、ざまぁなかったわよ」


 笑っている芹亜を見て、忍は呆れていた。


「でも、まさかあんたみたいなイケメンが樹利亜と結婚するなんて。意外だったわね。物好きなの? あんた。それとも、何かのダミーなの? 樹利亜は」


「俺は本気で樹利亜を愛している。だから結婚した。それ以外、何もない」

「へぇー。じゃあ、あの樹利亜を抱けるの? あんなブサイクな樹利亜を」

「ああ、抱けるよ」

「嘘! 絶対無理よ、あんなブサイク」

「いや、俺はちゃんと樹利亜の事。抱いたぜ」


 嘘? 

 信じられない顔をして、芹亜は忍を見た。


「俺は、外見なんて見てない。俺が見ているのは、ハートだけ。樹利亜は、自分が美人でも人を馬鹿にしたりしない。そんな事は、樹利亜にはできない。…きっと…あんたの言う事を聞いていたのは、お父さんの為だけじゃなく。あんたに、なんとか立ち直って欲しかったんだと俺は思う。樹利亜の体、見かけよりすげぇ痩せてたぜ。顔の事で、みんなに何を言われても必死に働いて、あんたにお金を渡していたのも。樹利亜の愛だったと、俺は思う」

「愛? まさか…」

「愛がなければ、お金は動かない。あんたが言う通り、樹利亜があんたをバカにしているなら、どんなに脅されたって、あんなに必死にお金を稼いで渡したりしないと思う。あんたも気づいていると思うけど? 」


 芹亜は何も言えなくなった。


 思い返してみると、樹利亜はずっと芹亜を庇ってくれていたのだ。

 虐められている芹亜を庇ってくれたり、酷い事を言われて傷ついている芹亜を元気づけてくれたり。

 ずっと樹利亜は、芹亜を「お姉ちゃん」と呼んで慕っていた。


 
 少しだけ、芹那の中に後悔の気持ちが込みあがってきた。

< 28 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop