【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
「それとも遅刻した方がよかったの?」
「それは、困る……」
悔しいけれど、起こしてもらわなかったら完全に遅刻だったことは明白だ。
「……けど、葵くん。寝てる女子の、部屋に入るなんて」
ましてや護衛なのに、とひとりごちる。
私は勢いよく起き上がり葵くんに反論した。
「お前は危機感なさすぎだよ」
「葵くんに言われなくても、危機感くらい持ってるよ……っ」
「じゃあ、俺がいなかったらどうすんの?ああやって襲われるまで起きないってこと?」
うぅ……。
腕を組んだ葵くんは黙り込んだままの私にさらにこう言った。
「もしお前になにかあったらどうすんだよ」
葵くんの護衛らしいもっともな台詞に、それ以上なにも言えるはずもないのだった。