【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


「それとも遅刻した方がよかったの?」


「それは、困る……」



悔しいけれど、起こしてもらわなかったら完全に遅刻だったことは明白だ。



「……けど、葵くん。寝てる女子の、部屋に入るなんて」



ましてや護衛なのに、とひとりごちる。


私は勢いよく起き上がり葵くんに反論した。



「お前は危機感なさすぎだよ」


「葵くんに言われなくても、危機感くらい持ってるよ……っ」


「じゃあ、俺がいなかったらどうすんの?ああやって襲われるまで起きないってこと?」



うぅ……。

腕を組んだ葵くんは黙り込んだままの私にさらにこう言った。



「もしお前になにかあったらどうすんだよ」



葵くんの護衛らしいもっともな台詞に、それ以上なにも言えるはずもないのだった。

< 26 / 300 >

この作品をシェア

pagetop