【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


「くそ。もう切れてる……」



受話器を掴んだ八雲先生が舌を鳴らした。



「雨野……お父さんに折り返した方がいい。連絡先はわかる?」


「は、はい……っ」



私は慌てて八雲先生から学校の子機を受け取ると、震える指でお父さんの番号を押した。



早く、お願いだから早く繋がって……!!


息を切らしながら私は祈る。


長く感じる何度目かのコール音のあと、



「もしもし。雨野ですが?」


「っ、お、お父さん!?お父さん!」


「……あれ。空かい?」



よかった、繋がって……。


久しぶりにお父さんの声を耳にした途端、目のふちに涙が溜まっていった。



「……お父さん大丈夫!?な、なにがあったの……!?」



ぐっ、と堪えて声を出す。



「どうしたんだ空。そんなに、大きな声を出して」


「だって、お父さんになにかあったみたいで……っ、今日体育祭だったんだけど……今、お父さんが……学校から電話がいったでしょ!?」

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