【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


私は悪い夢でも見ているんだろうか。



「……雨野!!」



背中に投げられたその声の主に、私は振り返る。



「……八雲先生、」



私と壁を交互に見て、八雲先生はハッと息をのんだ。



だけど、すぐに……



「雨野、お父さんが───!!」


「え?」



血相を変えた八雲先生の表情に、すっと血の気がひいていく。



「急いで来てくれないか!?」



お、お父さんが………?


私は八雲先生と一緒に体育倉庫を飛び出していった。


お父さんになにかあったの……?


嫌だ……お願い。


お父さんになにも起きてませんように。


お父さん、お父さん……。



八雲先生の後を追うように全速力で廊下を走り抜け、国語準備室と書かれた部屋へと飛び込んだ。

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