【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
「先生の名前を知った時から、俺はずっと先生を見てた。雨野のことを見てるってすぐに気づいた。先生も……そんな俺に、気づいてたと思う」
「……」
「でも。先生は、なんで俺がずっと先生を見てたか、本当の理由を知ってる?」
八雲先生は力なく顔を上げ首を振ると、一心に葵くんを見つめ返した。
「先生に言うのは、もしかしたら間違ってるかもしれない。正しくなんかないかもしれないけど」
葵くんは、澄んだ瞳で八雲先生を見る。
「────母さんと美雨を助けてくれて、ありがとう」
心から告げられた葵くんの言葉。
感情の読み取れない八雲先生の瞳から、ただ、静かに涙が零れ落ちていった。