【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


「先生の名前を知った時から、俺はずっと先生を見てた。雨野のことを見てるってすぐに気づいた。先生も……そんな俺に、気づいてたと思う」


「……」


「でも。先生は、なんで俺がずっと先生を見てたか、本当の理由を知ってる?」



八雲先生は力なく顔を上げ首を振ると、一心に葵くんを見つめ返した。



「先生に言うのは、もしかしたら間違ってるかもしれない。正しくなんかないかもしれないけど」



葵くんは、澄んだ瞳で八雲先生を見る。



「────母さんと美雨を助けてくれて、ありがとう」



心から告げられた葵くんの言葉。


感情の読み取れない八雲先生の瞳から、ただ、静かに涙が零れ落ちていった。

< 285 / 300 >

この作品をシェア

pagetop