【女の事件】十三日の金曜日
第13話
2月5日のことであった。

入江家では、2月1日に祖父とあつことひろつぐの3人が亡くなったので、深い悲しみに包まれていた。

あつことひろつぐが殺された事件で遺体の司法解剖などで時間をついやしたので、2月5日にお葬式をあげた。

お葬式は、お香典が出なかったので、家の貯金を使って、家族葬ですませた。

久通は、職場放棄をした後よしえと一緒に行方不明になっていたので、今も家族と連絡が取れない状態になっていた。

久秀は、かけマージャンによる疲れで職場放棄をした後、新居浜で暮らしているホステスの女の部屋に入り浸りになっていた。

そのあげくに、やくざともめ事を起こして、やくざの男数人を殺したので、殺人罪でケーサツに逮捕された。

その上に、ふきこが久通とお見合いをして結婚をしたのに、婚姻届けが出ていなかったことが発覚したので、さわぎが広まった。

2月6日に、広永さん夫婦が久通の家にやって来た。

そんな時であったが、笠岡(岡山県)で結婚生活を送っていた久通の姉・さよこ(47歳)が男の子ふたり(7歳と3歳)を連れて実家へ出戻っていた。

さよこは『笠岡にいればダンナにきつい暴力をふるわれるから助けてほしい…』と両親に切羽つまった声で言うていた。

広永さんは、さよこに対して『もう一度、ダンナさんと話し合いをしてみたらどうか…』と提示したが、さよこは広永さんの言うた言葉に腹を立てて怒っていた。

「アタシね!!このまま笠岡の家で暮らしていたらダンナに殺されてしまうのよ!!もう一度話し合いをしてみることはできんのかねって…あんたアタシに命令しているのかしら!!」
「命令で言うたのじゃないのだよ…もう一度だけダンナさんと話し合いをしてみたらどうかと提案しただけだよ。」
「やかましいわね!!ダンナは、話し合いをすることができん男なのよ!!気に入らないことがあればアタシとふたりの子供にきつい暴力をふるって来るのよ!!やくざのダンナと話し合いをしてもムダなのよ!!」
「だけどね、ダンナさんも話せばわかる人なのだよ。」
「広永さん、悪いけれど帰ってくれるかしら!!」
「えっ…帰ってくれ…帰ってくれってどう言うわけなのだ!?」
「あのね!!ここはアタシのうちなのよ!!久通はよその女と一緒に行方不明になった!!久秀は新居浜でヤクザ殺してサツにパクられた!!だからアタシが帰ってきたのよ!!」
「しかしだな…」
「広永さんね!!あんたは久通の結婚相手をテキトーに選んでいたので、久通が男をつまみぐいするみだらでやらしい女とイヤイヤ結婚したのよ!!ふきこが祖父とやらしいことをしよったから、久通と久秀がいじけてしまったのよ!!そのようになった原因を作ったのはあんたら夫婦よ!!わかっとんかしら!!」

久通の母親は、さよこを止めたあと広永さん夫婦に帰ってくれと言うた。

「さよこ…もうやめて…広永さん!!もう悪いけど、入江の家には嫁はいらなくなりましたので、ふきこさんにはこの家から出て行ってもらうことにしました。」

母親の言葉を聞いた広永さん夫婦は、おたついた声で言うた。

「こ、こ、こ、困りますよ…ふきこさんが離婚したら困るのは私たち夫婦なのですよ…」

父親は、立ちあがったあと広永さん夫婦にこぶしをふりあげてイカクした。

「やかましい!!テメーらのせいだ!!テメーらのせいで久通が婚期を逃したのだ!!テメーらのせいで久通が契約社員から正社員になれなかったのだ!!テメーらのせいで、久通はみだらな女と結婚したのだ!!まだわからんのか!!」

久通の両親から暴言をはかれた広永さん夫婦は、泣く泣くふきこを久通を離婚させて、相手を選び直すことにした。

広永さん夫婦は、ふきこを妻鳥(めんどり)町で暮らしている自動車学校の事務職の男性を選んで、2月11日頃にお見合いをさせることにした。

ふきこの再婚相手の男性は、かつての職場の部下であったが、出向で自動車学校の事務職をしていた。

その後銀行をやめて、正社員として働いていた。

収入は、ふきこが専業主婦で通して行くことができる金額で、ふきこのことを大事にしてくださるやさしい人なので、ふきこは広永さん夫婦にお見合いすると返事した。

ふきこは、2月11日にお見合いをした翌々日に市役所に婚姻届けを出して、正式に結婚をした。

広永さん夫婦は、ふきこは新しいダンナさんに専業主婦で床の間にかざってもらえたと思って一安心をしていた。

しかし、再婚相手の家ではより深刻な問題を抱えていたと言うことに気がついていなかったので、再び恐ろしい悲劇が起こってしまうと言うことに気がついていなかった。
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