蜂蜜

「そんな事、してないっ!してないよっ」


嘘でも、本当の事を言っている気になるくらい、繰り返す。


旦那は拳を上げる。


とっさに私は、顔を背け手でかばいながら、観念する。


一瞬、間があり旦那は私の襟元を掴んでいた手を思いきり突き飛ばし、私は床に簡単に叩きつけられた。



旦那は忌々しそうに舌打ちして、キッチンへ向かい、冷蔵庫を開けてビールを取りだし寝室へと入って行った。


私はへなへなと力が抜け、しばらく床に座りこんだままだった。



今回は殴られはしなかった。


前回はいつだっただろうか。



もう、本当に嫌だ…。

疲れた…。



こんな生活に意味はあるのか?


もう、別れよう。




私の頭の中はその考えがぴったりと音をたてて、確固としたものになった。




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