キミは当て馬、わたしはモブ。


 ――勝ちたいです。佐久良の好きなゲームに。


 そんな風に言われたときは何が始まるのかと身構えたけど、中身を開けばただの嫉妬だった。


 用はわたしが好きだった男の子、みのるくんに対して対抗心を持っていて、どんな人なのか知りたいのだという。


 嬉しかった。


 一度ポロっとこぼしただけの恋心を、帝塚くんは覚えていてくれたのだ。


 端から見ればどうでもいいことでも、わたしにとっては大切なことだったから。


 だからわたしは返事をした。



「じゃあ、一緒にやろうよ。そのゲーム」



 確かに勇気のいる発言だったよ。家に呼ぶっていうのと同じ意味だし。


 でも、お兄ちゃんがすねることはないよねぇ……?


 隣の部屋でいじけるお兄ちゃんを想像したら苛立ってきた。


 わたしのことを好きなのはわかるよ。大切にしてくれてきたっていうことも。


 何かを相談するならお兄ちゃんが言いやすいし、こっちも頼りにしてきてるんだよ。


 ……今回だって見守ってくれるって信じてたんだよ。



『……佐久良?』



 急におとなしくなったわたしに、帝塚くんが心配そうな声をかけてくる。



「あ……ごめん。ウチに来るの、いつにする? おすすめは……」



 と、お兄ちゃんが講義やバイトでいない日時を思い浮かべたとき。

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