キミは当て馬、わたしはモブ。


 毎日一緒に教室に入ってれば、みんな慣れてくるもんなのかもしれない。


 柊さんからは、視線を感じるときはあっても変な執着はなくなったし。見ればときどき悔しそうにはしてるけど。


 となると後は……みのるくんとの再会――。


 お兄ちゃんのせいで流れちゃったけど、わたしがちゃんと前に進むためには絶対に避けたくない道だ。

 
 正直みのるくんに会うのは、まだちょっと怖いけど……。



「帝塚くん」



 側に立つ帝塚くんの制服の袖をくいと引っ張る。



「あの、今度いつウチ来れる……?」


「いつでもいいですよ。今日でも」


「えっ、いやさすがに今日は……。えっと、今週の土曜日とか」


「わかりました」



 本音を言えば今日にでも来てほしい。でも放課後だと二人きりの時間は少ないだろうし、すぐ帰っちゃうだろうからなぁ。


 わたしだってベタベタしたくないわけじゃない。ただちょっと人の目が気になるだけで。


 人前でそういう雰囲気になるのは、やっぱり恥ずかしいって思うから。



「楽しみにしてます」



 帝塚くんが言う。瞳に期待が宿っていた。


 何に対してだろう。


 みのるくんに会えることだよね?


 わたしが家だったらいいって言ったから、それを楽しみにしてるわけじゃないよね……?


 ……って。一番期待してるのはわたしか。

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