会長様の秘蜜な溺愛
麗さんの表情がまたもガチだ。
背後にチョップ刑の時のようなメラメラとした炎が見える。
…憤慨している麗さんを横目に、勿体無きお言葉にニヤニヤが隠せないのは秘密。
「あ。そういえば菜穂、調査票出した?」
「…へ…?」
「進路調査票。明日までだったよね」
「あぁ!うん。第一志望はT大の経済にしたよ」
思い出したかのようにそう言った麗ちゃんは、とても切り替えが早いお方である。
瞬きを二度ほどしたらメラメラが消えていて
ガチの姐さん顔からいつもの麗ちゃんに戻っていた。…ちょっとホッとした。
「意外。菜帆なら英文か英米だと思ってたのに」
(…っ、)
…その麗ちゃんから目を逸らすようにして
透き通った濃橙色のダージリンティーに視線を落とす。
鼻を掠める爽やかで豊潤な香りに、ずっと包まれていたいと思った。
「……そう…、かな」
甘くて優しくて、ちょっとだけ感じる苦味のアクセント。
正反対のものが合わさっても、結果交わり合っていることに羨望を抱いてしまう。
――英語。
ずっと一番好きな科目で
一生関わっていきたいと心から思っているもの。
…でも、それは。