会長様の秘蜜な溺愛
麗ちゃんはご両親と暦先輩の他に
お祖父さまとお祖母さまとも一緒に住んでいる。
初めて来たときは立派な塀と彩られた木々、そして素敵な日本家屋の迫力に目が釘付けになった。
離れには弓道をするお祖父さまと暦先輩のため練習場所が備わっているほどだ。
少し離れたところにあるお隣の香月くんのお家も、かなりの広さを誇る立派なものだった。
「んーっ、ほんと美味しい!!さすが菜穂っ」
「お口に合うなら何よりです…!」
麗ちゃんのお母さんは茶道の先生をされていて
暦先輩や麗ちゃん以上の凛々しさと気品、そして常に落ち着いた雰囲気が伝わってくる。
暦先輩に似た柔らかな笑顔が素敵で、いつも優しく出迎えてくださる方だ。
旅行好きということもあって世界各国の茶葉に関する知識が凄いそうで
直々の話を聞いている麗ちゃんの知識も相当なもの。
こうして遊びに来ると、わたしが作ってきたお菓子に合わせて
取り寄せた茶葉を選んでお茶を淹れてくれる。
和菓子なら抹茶を点ててくれることもあり、わたしはいつも楽しみに胸を躍らせているのだ。
「あたし今日菜穂が来ること、お母さん以外には内緒にしてたのに…。お母さん朝バラしたの…」
「内緒…?」
「っだって菜穂のお菓子を食べたい敵が増えるでしょ!?ただでさえお母さんたちが折れないのに暦もなんて家族全員だわ!あたしが全部食べたいのに!!」
「れ、麗さん」
「暦のヤツ、“菜穂ちゃんのお菓子絶対残しといてね”って直接言っといて授業中2回もメッセージ寄越してね!?しかも今日帰りが遅いお父さんとおばあちゃんも!どんだけしつこいのよ!!」
「いやもったいなきお言葉ですけども!!麗さん落ち着いてっ」
「これは死活問題なのっ!!」