会長様の秘蜜な溺愛
周囲が身勝手に造り上げてきた
多大なプレッシャーの中で、彼らはどれだけ苦しい思いを――…。
「…けど、蓮は違う」
「っ、」
「あいつは根っからの天才だった。県選抜でもユースでもエースナンバー着て必ず個人表彰されるヤツだった」
「………」
「中学では部活が終われば自主練に残ることなく家に帰って。
俺が10回やって何とか出来るようになったことを、あいつは絶対1回でやってのけた」
暦先輩の話をしていた時に感じ取れた
穏やかな声色とは一転して。
神谷くんから伝わってくるのは、会長に対する計り知れない嫌悪。
「決まった時間の練習しか出ないくせに大事なシュートは必ず決めて、ミスもある方が珍しい。“優秀な兄に比べて弟は”って言われ続けて」
「…神谷くん…」
「…俺が頑張って頑張ってやっと近付けるかなって思い始めた去年、あいつは“生徒会長をやるから”っていうふざけた言葉残してサッカー部を捨てたんだ」
「…えっ…?」
「ははっ、生徒会長やるから部活が出来ないなんてあるわけねぇのにな?しかも生徒会交代は秋なのに、5月にはそう言ってた」
その乾いた笑いはきっと
神谷くんが追い詰められてしまった、果てのもの…。