会長様の秘蜜な溺愛
「ヨミさん、“自分は不器用だから人の何倍も努力するんだ”っていつも言ってた」
事実が紡がれていくほど
穏やかで、でも悲しそうな声色が
彼らの過去を物語っていく。
「…俺も昔監督に、帰れこのヘタクソがーって毎日言われててさ。言われたことをすぐ出来なくてピッチからつまみ出されたこともあったよ」
「…っ…」
「でもそんな俺を、ずっと励ましてくれたのがヨミさんだったんだ」
王子と呼ばれる品格が
主将やエースと呼ばれる覚悟が
常にそれが当たり前だと思われるために、彼らは。
「俺はヨミさんがいなかったらここまで頑張れてない。
…だからあの人本当にすげぇんだよ、腹黒いのがムカつくけどな」
神谷くんが笑ったのが分かって、わたしも笑みを含んだまま頷きを返した。