会長様の秘蜜な溺愛
あの時彼の瞳に見え隠れした冷然たるものは
むしろ意思表示だったのかもしれない。
不思議そうにわたしを見た結花ちゃんは
“そういえば菜穂と蓮くんって同じ桔梗学園だったね!”と、思い出したように言っていたけれど。
彼はきっと、最初からすべて分かっていたのだろう。
わたしが桔梗の生徒であることはもちろん
了承願を出さずにアルバイトをしていた
「鉄の校則」に研がれもしない牙を向けた、愚か者だということを。
それから心ここにあらずのまま夕方になって、アルバイトが終わって、結花ちゃんが渡そうとするバイト代を必死に拒んだのだけは覚えてる。
元々バイト代は貰わないとお母さんに宣言してきた。
しかも3日間だけなのに諭吉さんがいたから本気でお断りした。
シフォンケーキと手作りのジャムを貰えただけで、十分すぎるほどだった。
結局まともに眠ることが出来ないまま、出来るはずがないまま
今日という日を迎えてしまったのだ。