会長様の秘蜜な溺愛



それからだ。


姫里自身が病弱な体質へ変わってしまったこともあるが

元来心配性だった姫里の両親は過保護になり

周囲も含め、ある種の寵愛へと変わっていった。


誰もが姫里の涙を見ることの無いよう尽力し

彼女の願いを叶えるため手を尽くした。


そばにいて欲しいと言われた蓮と暦は、その願いに忠誠を誓った。


あれほどの怖い思いをした彼女が

もう悲しむようなことは二度と無いようにと。


――…その周囲に違和感を抱き始めたのが、奏と麗である。



計り知れない恐怖がトラウマとして残り

傷ついた姫里を周囲で支えていくことが最優先で、使命であることは確か。


けれど

欲しいものがあれば真っ先に両親に言い与えてもらい

班行動は常に蓮と暦と一緒じゃなければ嫌、自分の思い通りにならなければ泣く。


方程式のようなその節が当然となっていき

姫里を泣かせないためならどんなわがままでも叶える、その甘やかしが

…果たして姫里のためになるのかと、奏と麗は首をかしげることが多々あった。



―…それからどんな時でも自分を選んでくれた蓮に

幼き姫里は、ほのかな恋心を抱いたのだ。

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