会長様の秘蜜な溺愛
◇
「…っ…ほんと…、…学校っ…、っ広すぎ…っ!」
溢した呟きは息が絶え絶えだった。
桔梗の広さは県内最大級を誇っており、中央校舎・東校舎・西校舎に分かれている4階建てだ。
各学年の教室や職員室が在り常に喧騒の絶えない中央校舎。
図書室や音楽室などの特別教室、各部活専用の部室も完備された東校舎。
ちなみに3つ存在する体育館へ行くには、いずれも東校舎を通る必要がある。
そして
1階が購買兼食堂とホール、2階が各教科の準備室、3階が資料室になっている西校舎。
生徒会室が在るのはこの西校舎の4階。即ち最上階なのである。
お昼以外はただでさえ人がまばら…いや皆無の西校舎、それも最上階。
中央校舎を抜け、渡り廊下を歩いた先の西校舎専用階段は
特に放課後なんかは上れば上るほど、中央校舎から聞こえる喧騒が薄れてゆく。
生徒会役員以外の生徒が、西校舎の2階以上に足を踏み入れることはまず無いと言って良い。
…週1文化部の体力寿命はたかが知れていた。
最後のほうは大地を踏みしめる登山家の気分だった。
(…ちゃんと謝って、罰を受けよう)
生徒会室の目の前まで来たところで、初めてゆっくりと息を吸い込んで自分を落ち着かせた。