会長様の秘蜜な溺愛
わたしは2年連続で図書委員になるくらいには、桔梗の図書室がお気に入りだ。
本を読むのが好きなのもあるけど、書架から香るヒノキの匂いと
穏やかな時間の流れを感じられるところが好きで。
「ね、前に菜穂ママが言ってた本ってあるかな?」
「あ、うん!わたしこの前カウンター当番だったとき読んでたから」
「ほんと!ずっと読みたかったのー。それにするっ」
サスペンスものが好きな麗ちゃんにと
お母さんがおすすめしたイギリスのサスペンス小説。
わたしも大好きで、カウンター当番の度に読んじゃうんだよなぁ。
(……あ、)
洋書小説の書架へと目線を流す途中
洋書絵本の書架で目に留まったその一冊に、わたしは嬉々とした息を漏らした。
『The Little Prince』
「あ、これ菜穂が一番好きな本だ」
「うん」
思わず目に留まったのは、星の王子さまを英訳した本で
お母さんが初めて読み聞かせをしてくれた思い出の一冊だ。
もちろん最初は英訳が分からない年齢だったから、日本語で読んでくれるお母さんの言葉を熱心に聞いて、平仮名で書き留めたっけ。
わたしが読書と英語、どちらも好きになったきっかけの絵本だった。
リトルプリンス。
単純な訳をすれば、《小さな王子様》になる。