会長様の秘蜜な溺愛



わたしは2年連続で図書委員になるくらいには、桔梗の図書室がお気に入りだ。


本を読むのが好きなのもあるけど、書架から香るヒノキの匂いと

穏やかな時間の流れを感じられるところが好きで。


「ね、前に菜穂ママが言ってた本ってあるかな?」

「あ、うん!わたしこの前カウンター当番だったとき読んでたから」

「ほんと!ずっと読みたかったのー。それにするっ」


サスペンスものが好きな麗ちゃんにと

お母さんがおすすめしたイギリスのサスペンス小説。

わたしも大好きで、カウンター当番の度に読んじゃうんだよなぁ。


(……あ、)


洋書小説の書架へと目線を流す途中

洋書絵本の書架で目に留まったその一冊に、わたしは嬉々とした息を漏らした。


『The Little Prince』


「あ、これ菜穂が一番好きな本だ」

「うん」


思わず目に留まったのは、星の王子さまを英訳した本で

お母さんが初めて読み聞かせをしてくれた思い出の一冊だ。

もちろん最初は英訳が分からない年齢だったから、日本語で読んでくれるお母さんの言葉を熱心に聞いて、平仮名で書き留めたっけ。

わたしが読書と英語、どちらも好きになったきっかけの絵本だった。


リトルプリンス。

単純な訳をすれば、《小さな王子様》になる。

< 54 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop