会長様の秘蜜な溺愛
(プリンス…か)
白馬に乗った…とまではさすがに言わないけれど
いつか自分にとっての王子様が現れると、幼いながらに信じ切っていた。
…今でもどこか夢見ているのかもしれない。
わたしを好きになってくれて、わたしも心から好きになれるような人が
ひょっとしたら、いつか……なんて。
“菜穂。
――これは、オレたちだけのヒミツだよ”
目眩がした。
昨日の今頃、わたしは。
色気と余裕を併せ持つ危険な獣に、捕らわれていたのだ。
「小さい頃から大切にしてるって言ってたもんね。今でも読むことある?」
「もちろん!表紙にジュースのしみがついちゃってるんだけど、大好きだから何回も読んでるよ」
「ふふっ。あたしも一番好きな小説で破けてる部分があるんだけどね、それも含めて大事な一冊って思えるようになっちゃった」
麗ちゃんの柔らかな微笑みに、わたしも自然と笑顔になった。
…昨日のことには、蓋をして。