オオカミさん家の秘密
おかしいよね。
なんで信じてくれなかったのかな。
私、本当に何もしてないのに…
【相川千星side END】

【大神狼side】
「って言うのが私の話!」
…嵐王ってそんなに腑抜けの集まりだったんだね。
「でも、やっぱり悔しいなあ…」
そりゃそうだ。
私でも悔しい。
…いや、多分悔しいだけじゃ足らなくて憎む。
ーコンコン…
「ん?」
「失礼します。お嬢いいですか。」
「ああ。」
私は虎と目を合わせて軽く頷く。
そして千星の頭を撫でて部屋を出る。
「なんだ、その顔は。」
「いや、お嬢が誰かの頭を撫でてるの初めて見ましたので…
あんなに柔らかく微笑むお嬢、珍しいですね。」
「…そうか?」
「ええ、あ、頭がお呼びです。」
…父さんが…
珍しいな。
いつも虎を通して読んできてたのに。
「分かった、直ぐに行く。」
私は呼びに来た組員と別れて父さんの部屋へ行く。
…なんか案件でも来たのか。
ーコンコン…
「狼か?」
「ああ。」
「入ってこい。」
私は父さんの部屋を開けて中に入る。
ドアの前に立ち、腕を組む。
「…何か用か?」
父さんは椅子から立ち上がって窓の外を見る。
「…殺し屋となったお前と話したかったんだ。」
「…は?」
私を殺し屋として育てたのはあんただろ。
「…頭の言うこと聞いて殺し屋になって?
頭の指図してきた奴を殺して?
…それだけだけど。」
私をここまで有名な殺し屋にしたあんたが今更私と何を話そうと言うんだ。
「…狼、私は…」
「頭に聴力を奪われた恨みから私は強くなって、今では世界NO.1の殺し屋だけど何か?」
…恨みなんか持ってない。
「虎は跡取りとして育てて私は殺し屋として育てて?
そこからまた何を話そうって言うの?」
父さんに恨みなんか持ってない。
聴力を奪ったのは私の叔父。
分かってるのに…
なんで口から出てくるのはこんな刺々しい言葉なんだろうか。
「…何か依頼があったから呼ばれたのかと思ったけど。」
「…今は何も来ていないさ。」
今は、ねえ…
そのうち来るな。
「…桜から聞いたよ。
狼に救われた時のこと。」
今更名前なんか呼ばないで欲しい。
失ったはずの感情が戻ってくるから。
「…痛みも何も分からなくなるくらいまで自分の心を殺してたんだな…」
…そうやって育てられたからね。
「…狼は、あの事件が起きるまで明るくて優しくてかわいい女の子だった。覚えてるか?」
「…」
【大神狼side END】
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