逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
振り向いた彼女にオレは固まった。
大げさにいうつもりじゃないが、天使かと思うほどきれいな女の子で。
子供のようにあどけないのに、一瞬で見とれて心臓がバクバクと高鳴った。

でも、大人の余裕で、
「ごめんね、笑って。でも、実はオレもそう。食べにくいよね、自由にどうぞって。」

「はい。知り合いもいないから、退屈だし。」

「じゃ、早く終わるようにおしゃべりでもしとく?
オレは大学四年生。君は?」

「高3です。」
そんな会話から始まってしばらくすると…。

「あの…、大学って楽しいですか?」
真っ直ぐな眼差しで尋ねてくる。

「まあ、自由も多いから高校よりは色んなことができるかな。」
年上ぶって大した大学生でもないのに、わかったような発言をする俺。

「私、ちゃんと社会に出て働きたいって思ってて。でも、家族は大反対。

ただでさえ世間知らずって自覚してるのに、これ以上世間知らずになったら怖くって。
安泰な人生って一握りでしょ?
万が一、旦那さんが無一文になっても私がしっかりしてれば助けてあげられるのにって。」

「しっかりしてるんだね。」

「そんな、一緒に歩きたいだけです。
二人なら幸せ二倍、辛いことは半分こできるでしょ。」

眩しいほどの笑顔で言い切られて、オレよりも自立していたし、正直、心を掴まれた。

こんな考えのお嬢さんがいるのかと。

その後、給仕に食べ物を少し持ってきてもらうと、笑顔で
「半分どうぞ」と当然のように分けてくれた。
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