逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
しばらくすると、お兄さんらしき人に呼ばれ、
「失礼します。」
と、きれいなお辞儀をして立ち去っていった。

その後、彼女に影響を受けたというか、親の会社でも、自分なりに挑戦しようと足掻いてみたり、
世間知らずのお坊ちゃんと思われるのは悔しくて、入社後、世の中の厳しさを知り歩んで来た。

そんな日々を三年過ごした頃、偶然出席したパーティーで、また彼女に再会した。

大学生で、成人したであろう彼女は、天使のような幼さから、大人の女性へと変化していた。

この時、彼女が九条家の令嬢で財界では話題になっているとのこと。
彼女を婚約者として迎えたいと願うところが多くあるが、父母兄が一切受け付けず
会社の利益の為の婚姻は不必要と大事に大事に育てられていた。
この日は、ガッチリと兄がガードをしていて、オレが近づく隙は無かった。


遠巻きで見ていた彼女は屈託のない笑顔で、三年前の面影が残っていて魅力的だった。


それから、フランスへ転勤したオレは彼女と会うことなく仕事に没頭して。
時折、彼女を思い出していたのは、姉貴が事あるごとに彼女の兄の話をしていたから。
財界のイケメンはまだ独身だとか、なんとか。
妹のことを探りを入れても、最近はあまり表立って出てこないと。

一途に想い続けたというよりは、気になる存在で尊い人だった。
社会へ出て、蝶のように自由でいて欲しいと。

それからしばらくして、3回目のパーティーで目撃する事になる。
彼女をどうしたいというよりも、自然と体が動いていた。
近づいた彼女の独り言

「お腹すいたなあ。」
こんな言葉でときめくおれもどうかしているけど、十分すぎるほど魅力的な言葉だった。
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